
明神川沿いに並ぶ社家の土塀と門へと架かる石橋
京都市北部にある賀茂別雷神社(上賀茂神社)(以下通称の上賀茂神社と表記)の境内を「ならの小川」と呼ばれる、浅瀬で川底には白砂の清流が流れています。藤原家隆(いえたか。平安時代末〜鎌倉時代初期の歌人。)が

上賀茂神社を流れるならの小川
と詠んだことで知られるならの小川は賀茂川を源としており、上賀茂神社の境内を出ると分流して一方は「菖蒲園川(しょうぶえんがわ)」と名を変えて南下し、もう一方は「明神川(みょうじんがわ)」と名を変え、東へと流れていきます。明神川は、ならの小川と同じように小川のせせらぎといえるほどの浅瀬の流れですが、水は清く速い流れを呈しています。
洛北の地、上賀茂は上賀茂神社を中心として、室町時代から神社の神官たちが構えた屋敷による町並みが形成されてきました。
上賀茂の住民は、大きく神主家筋にあたる社司(しゃし)と氏人(うじびと。社司を支える一般社家)で構成されていた「社家」(神職を世襲する家筋)、神を護持してともに神社に奉仕する寺院・僧侶といった「寺家(じけ)」、田畑を耕して経済面から氏人を支えた百姓や職人から成る「地下人(じげにん)」から成っていました。そして社家を中心に、上賀茂神社に奉仕する目的をもったまとまりのある自治的結合(共同体)が構成されたことから社家町(しゃけまち)が形成されてきたのでした。
社家町は七つの町から構成されていて、現在の山本町、池殿町、中大路町、南辻子町(現在の南大路町)、岡本町、梅ケ辻町、竹ケ鼻町がこれにあたるとされています。(下記マップ参照)
古来、神社のなかには多数の社家が存在するところもありました。伊勢神宮のおよそ60家、下鴨神社のおよそ50家、そして上賀茂神社には140家はあったといいます。
しかし明治時代以降になると京都の近郊農村的性格を徐々に強め、社家町の性格はうすらいでいきました。昭和6年(1931)に京都市域に合併されてから後も郊外の一村落としての景観をとどめていたものの、次第に都市化の波は上賀茂にもおしよせ、農地は宅地に変わるなど、今や上賀茂も京都市内中心部と連続した市街地に変貌しようとしていました。このような状況を放置してそのまま見過ごしてしまえば貴重な歴史的環境が失われてしまうとの認識の高まりから、昭和63年(1988)、遂に国の重要伝統的建造物群保存地区の選定を受けるに至りました。平成23年11月29日現在で国(文化庁)に登録されている全国93ケ所の保存地区のうち、その分類上「社家町」として登録してあるのは、ここ上賀茂だけです。
こうして現在上賀茂の地には、旧来のままの社家町が清々しく残っているのです。

藤木社と楠の木
今からおよそ五百年前というと室町時代後期に当たる時期で、この楠は社家町の歴史をずっと眺めてきたと言えるでしょう。
明神川はこの社のすぐ左手うしろを流れています。
さて、明神川の南側の川沿いには家々の土塀が列をなして並んでいます。明神川を挟んで家が建っているため、各家の門には土橋、石橋、木橋といった造りの小橋が架けられています。そして明神川の水の使い方で興味を引くのが、社家の中で唯一公開されている西村家庭園で、ここの庭にはこの明神川から水が引かれ、そして最後にはまたこの川に戻すという、社家庭園特有の水利用形式がとられています。

京都市指定名称庭園−賀茂の社家−西村家別邸
使われる水は明神川から引いた水。その明神川の水は、その上流である上賀茂神社境内を流れるならの小川でみそぎ(禊。身心の罪やけがれを水で洗い清めること。)にも使われた水です。
一方道路を挟んだ明神川の北側に並ぶ家々の中にも社家はありますが、こちら側の庭園は、明神川の水が利用できないことから枯山水として造られているといいます。
上賀茂の明神川沿いに並んだ社家、その門へと明神川に架かる小橋や家を囲む土塀,そして土塀越しに見える庭園の緑といった景観は、社家町独特の静寂な歴史的風趣を今に残しています。

明神川沿いに並ぶ社家の土塀と門へと架かる石橋や土橋
【近隣観光マップ】※マップの操作については下記をご参照ください。
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- 賀茂川
- 上賀茂神社
- ならの小川
- 上賀茂神社一の鳥居
- 明神川
- 京都市指定名称庭園−賀茂の社家−西村家別邸
- 藤木社と楠の木
- 池殿町
- 山本町
- 中大路町
- 南辻子町(現在の南大路町)
- 竹ケ鼻町
- 梅ケ辻町(図の右側に隠れていますので、左側にドラッグして下さい。)
- 岡本町(図の右側に隠れていますので、左側にドラッグして下さい。)
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